INTERVIEW
CONTENTS
お客様に聞いてみた!
Vol.3
「鉄くず・ひと・仕事」を
つなぐ拠点に
応接室機能も兼ね備えた
「ミュージアム」のあるオフィス
- お客様/矢追大祐(大阪故鉄株式会社 代表取締役社長)、木俣典子(大阪故鉄株式会社)
- ディレクター/越智ゆみ(株式会社KATATI)
- 設計士/小栗高志(OGURI DESIGN OFFICE.)
- 社屋トータル・リノベーション 〜外装から内装、サインまでの統合デザイン〜
- ●クライアント名/大阪故鉄株式会社 https://kotetsu.co.jp
- ●クライアント業種/鉄スクラップをメインとした金属リサイクル業
- ●所在地/大阪府大東市
- ●リノベーション内容/オフィス改装
- ●改装範囲/諸福営業所の内装・外装
- ●面積/1階92.37㎡ 2階46.18㎡
- ●株式会社KATATIの担当/コンセプトメイキング/ブランディングデザイン/進行管理、ディレクション/内装デザイン・設計/サインデザイン/イラスト制作
- (取材日2025年2月10日)
INDEX
社内になぜ「ミュージアム」?
想定外の改装プランを採用した理由
1946年の創業以来、一貫して「鉄」のスクラップ事業を手がけてきた大阪故鉄株式会社。近年、世界的な脱炭素化の流れが鉄スクラップ市場に追い風をもたらし、もともと堅調だった業績がさらに飛躍。このたび、諸福営業所の増員にともないオフィスを改装することになりました。
営業所の改装について、矢追社長が当初イメージしていたのは「効率化のためのレイアウト変更」程度だったといいます。しかし、最終的に完成したのは、ミュージアムスペースを併設した“地域に開かれた営業所”でした。従来の「営業所」のイメージを覆す斬新な改装プランがなぜ選ばれたのか、竣工後はどのように活用されているのか。矢追社長と、改装プロジェクトを牽引された木俣さんに、KATATIの越智と設計士の小栗さんが話をうかがいました。
左下/大阪故鉄株式会社代表の矢追大祐さん、左上/同社の木俣典子さん、右上/設計士の小栗高志さん、右下/KATATIの越智ゆみ
改装のきっかけは現場からの声
そもそも諸福営業所の改装は、御社で事務をされている木俣さんが発案したそうですね。まずはその経緯について、改めてお話しいただいてよろしいでしょうか。
以前は住之江区にある本社に勤務していたのですが、数年前に諸福営業所へ異動しました。そこで事務の仕事をしているうちに、オフィスの動線の悪さが気になり始めたんです。ほかの社員からも「オフィスをリフォームしたい」と声が上がっていたので、私がみんなの意見を代表して社長に相談しました。
諸福営業所の人員が増えるなかで、オフィスがキャパオーバーになりつつあることは僕も感じていました。何年か前にも座席配置の変更を行いましたが、もう限界だなと。ですから、木俣さんからのリフォームの提案にはすぐにOKを出しました。
どうせやるなら、今回はオフィスの机や椅子もすべて一新したうえで、レイアウトをガラリと変えてしまおうと考えたんです。木俣さんは事務職として勤務時間のほとんどをオフィスで過ごしていますし、前職が住宅設備関係の会社だったのでリフォームに関する知識もある。改装プロジェクトの担当者として適任だと思い、改装業者の選定からすべて木俣さんに任せることにしました。
それで、木俣さんが弊社に声をかけてくださったんですね。最初はウェブサイトの問い合わせフォームから連絡をいただいたと記憶していますが、弊社のどんなところが目に留まったのでしょうか。
オフィスのリフォーム会社を探してウェブサイトを見ていても、どこも似たような訴求ばかりだったんです。おしゃれなオフィスのイメージカットや「有名オフィス家具メーカーのデスクを使ってます」といった謳い文句が並ぶなか、外装から内装までトータルでデザインするケースが多いKATATIさんは、良い意味で「異質」でした。ここならおもしろい提案をしてくれそうだと思ったんです。
実際には、弊社を含めて数社で検討されたのですよね。
はい、合計3社にお声がけしました。
ヒアリングやプレゼンは木俣さんに任せて、僕は彼女がまとめた報告を受けて最終判断する、という形をとっていました。
木俣さんからの報告は営業所の会議室で受けたのですが、彼女の話を聞いているうちに、3社のうちどこにお願いしたいのかが透けて見えましたね(笑)。本人は平等にプレゼンしているつもりだったのでしょうが、KATATIさんのプランを説明するときの熱量が、ほかの2社とは明らかに違っていましたから。
「オフィスにミュージアム」という衝撃
ありがとうございます(笑)。われわれの改装プランについて、矢追社長は率直にどんな感想を抱かれました?
正直に言うと、最初はびっくりしました。僕の頭のなかでは「リフォーム=オフィスを広く、効率的にする」というイメージしかなかったので。そこに「オフィスの中に鉄くずのミュージアムをつくる」という提案が飛び込んできたわけですから。まず「ミュージアム」という発想自体がなかったので、純粋に驚きましたね。
諸福営業所に新設した「てつ くつ しごと MUSEUM」
ただ、じっくりプランを見てみると、ものすごくおもしろい。かつて営業回りをしていた頃、三重県のお客様が「地元の子どもが工場に見学に来たときに、自分たちの仕事や鉄のことを知ってもらえるような展示があればいいよね」と言っていたのを耳にしたことがあるんですね。
そのときの記憶が頭をよぎり、「KATATIさんのプランなら、あのときお客様が言っていたことができるかもしれない」と。その予感は、すぐに「やりたい」という願望に変わりました。
ご提案時に使用した資料/コンセプトシート
ご提案時に使用した資料/全体がわかる鳥瞰図
私たちも、最初から「ミュージアムありき」で考えていたわけではないんです。改装プランのためのヒアリングを木俣さんにするなかで、御社が地域の子ども向けのワークショップを定期的に開催しているというお話が強く印象に残りました。特に、1年前のイベントでは大人と子ども合わせて600人を動員して、その日は本当に楽しかったとおっしゃっていて。
地域とのコミュニケーションを大切にされている姿勢が、ひしひしと伝わってきましたよね。
木俣さんから「ワークショップが開けるスペースがほしい」という要望をいただいたので、それは絶対につくりましょうと。ただ、普通の会議室に椅子と机を並べただけの空間では、大阪故鉄さんらしさが伝わりません。なにか良いアイデアはないかと考えたときに思い浮かんだのが、鉄スクラップのコンテンツ力の高さでした。
ヒアリング時に木俣さんが教えてくださった鉄スクラップに関する知識──鉄くずが鉄スクラップになるまでの工程や、鉄スクラップの環境への貢献度の大きさ、市場におけるポテンシャルの高さなどは、どれも初めて知ることで、大人が聞いてもわくわくするほど興味深かった。
天井クレーンで大きな鉄くずを引き上げている
機械では処理できない厚さの鉄くずをガスバーナーで切断
そんな情報を展示として散りばめたミュージアムのような空間をつくれば、子どもが楽しめるスペースになるのはもちろんのこと、御社のブランディングとしても機能するのではないか。小栗さんとも相談し、今回の内装デザインの“肝”にしようと決めました。
ミュージアムの壁面に、会社概要や「鉄くず」に関するクイズのパネルを展示
