CASE

CASE 04

「作業場」から「集まる場」へ。一軒家をコンセプトに再定義したオフィス

クライアント業種

ソフトウェア開発、アプリケーション開発、インフラ構築などを手がけるシステムインテグレーション企業

用途

本社オフィス

リノベーション箇所

ビル一棟(外壁・1F〜4F内装・屋上)

株式会社KATATIの担当

物件選定同行/コンセプトメイキング/ゾーニング/デザイン/進行管理/ディレクション/サインデザイン/イラスト制作

ビル一棟を「ひとつの家」に。
コロナ禍を経て辿り着いた、社員が集いたくなる究極の拠点

「今日、誰かオフィスに来てる?」 そんな会話が当たり前になったコロナ禍。システムインテグレーターとしてデジタル領域の最前線を走るこちらの企業様もまた、オフィスの存在意義という大きな問いに直面していました。
「リモートで完結する時代に、あえて集まる場所を作るなら、それはどんな場所であるべきか?」
出した答えは、オフィスを「作業場」から「一軒の家」へとアップデートすること。物件探しから共に歩み、ビル一棟を丸ごと使って描き出した、新しい時代の「帰るべき場所」の記録です。

ファミリーが暮らす「一軒家」

リノベーションにあたり、私たちは社員アンケートを実施しました。そこで見えてきたのは、人々が最もリラックスし、自然体で集まれる場所は「自宅」や「友人宅」であるという事実です。
そこで、ビル全体を「一軒の大きな家」に見立てるコンセプトを立案。1階から屋上まで、家族が過ごすシーンに合わせた機能を割り振りました。

階層ごとに広がる「暮らし」の風景

・1F:玄関 & 仕事場(外と中を繋ぎ、集中を生む場所)
・2F:リビング & ダイニング(会話と食卓を囲む場所)
・3F:勉強部屋(落ち着いて実務に励む場所)
・4F:屋根裏部屋(遊び心と文化が爆発する場所)
・RF:庭(空を感じ、心を開放する場所)

1F:企業の意志を刻む「ミュージアム・エントランス」

扉を開けると目に飛び込んでくるのは、代表の想いをビジュアル化した巨大なアート。落馬した仲間を支えながら走る姿は、「チャレンジする人を支える」という企業のDNAを表現しています。

奥のワークスペースは、あえて無機質なグレーチング(格子)で仕切り、適度な「人の気配」を感じつつも、エンジニアが画面に没入できる「掘りごたつ式」のデスクを配置しました。

2F:同じ釜の飯を食う「キッチン・リビング」

「チーム力を高めるのは、共に食べる時間だ」という確信のもと、フロアの中心に本格的なキッチンを設置。ここでは、仕事の合間にコーヒーを淹れる人、誕生日を祝う人、料理を作る人が自然に混ざり合います。「少し喋りかけても大丈夫な空気感」が、リモートでは得られない偶発的なアイデアを生んでいます。

3F:家族を支える「勉強部屋 & 応接室」

会議室

応接室

執務室

一軒家における「勉強部屋」の役割を担う3Fは、バックオフィス業務を支える総務の方々が最も長い時間を過ごす場所。そのため、1F・2Fのクールなトーンとは対照的に、「温かみと安心感」をデザインの軸に据えました。
デスクの角に丸みを持たせ、全体の色調をソフトに整えることで、集中力とリラックスが共存する環境を構築。また、来客を迎える応接室や会議室もこのフロアに集約し、施主様の誠実な姿勢が伝わる、落ち着いたホスピタリティ空間として仕上げています。

4F & Stairs:遊び心と「のぼる楽しさ」

漫才ステージ(寄席)

エレベーターのないビル。その弱点を「楽しさ」に変えるため、階段の壁面には会社の歩みを描いたイラストサインを散りばめました。 のぼり切った先にある4F「屋根裏部屋」には、なんと本格的な「漫才ステージ(寄席)」を設営。独自の文化を大切にする企業様ならではの、笑顔が絶えないイベントスペースです。

外観デザイン:コストを抑え、街に開かれた「顔」を作る

「一軒家」としての佇まいを完成させるため、外装にも独自のブランディングを施しました。

賢いコストコントロールと視覚効果

ビル外壁全面に塗装などの意匠を施すことは多大なコストがかかります。そこで、建物の下半分のみ外壁を変える「バイカラー(ツートン)デザイン」を採用。既存の外壁塗装の色味に馴染むよう意識しつつ、通行する人や車から目に入りやすい1〜2階をモルタルの塗り壁にすることで、スタイリッシュな印象へと一新させました。この手法は、コストを抑えながらも、道行く人に「何かが変わった」という驚きを与える、非常に効果的な選択となりました。

街のギャラリーとしての窓際

大きな道路に面した窓際は、外からの視線を意識して常にシンプルに保てるよう設計。1階のギャラリースペースが外からも垣間見えることで、地域に対しても「オープンでクリエイティブな企業」というメッセージを発信しています。

企業の誇りを掲げるサインデザイン

社名サインは、このビルのために新たにデザイン。夜間や遠くからでも社名が認識しやすいよう、配置やフォルムに徹底的にこだわりました。

美しさと「安全・機能」の天秤

今回のプロジェクトで最も時間をかけたのは、実は「目に見えない整理」でした。
例えば、1Fのトイレ配置。利便性を求めてトイレを増やせば、エントランスの「顔」としての余裕が失われてしまいます。私たちは「このビルで最も大切にすべき価値は何か?」をクライアントと徹底的に対話し、あえて機能を絞ることで、圧倒的な開放感とブランディングを両立させました。

また、古いビル特有の「屋上の安全性」や「法規的なハードル」に対しても、建築士と共に一つひとつクリア。ルーバーによるプライバシー保護や、安全な階段への作り替えなど、「安心して挑戦できる土台」をデザインの力で構築しました。

オフィスは「文化」を育む器になる

完成したビルは、単なる「職場」ではありません。社員が自発的に集まり、料理をし、漫才を楽しみ、そして高密度の仕事をする。そんなクライアント企業様の文化そのものを体現する器となりました。
私たちはこれからも、表面的な装飾に留まらず、企業の想いとそこで過ごす人の体温に寄り添った空間づくりを続けていきます。